ローカルプロジェクト
能登から新しい働き方へ。震災を乗り越えて見つけた「デジタルで生きる道」
令和6年におきた能登半島地震の影響で、仕事や住まいを失うという厳しい状況が続く中、地元に残りながら新しい働き方や生活をしたいと望む声は多くあります。そうした思いに応える形で実施されたのが、「能登半島デジタル人材育成プロジェクト」です。
この講座は、デジタル業務を“地域の新しい生業”として根付かせることを目標に、無料で充実したスキル習得の機会を提供してくれました。私自身も受講したことでデジタルスキルが大きく向上し、職場の上司から「仕事が早い」と評価され、報酬アップにもつながるなど、確かな手応えを感じています。
この記事では、本プロジェクトへの参加を通じて得た気づきや学び、そして地域に広がる可能性について、お伝えします。
「能登半島デジタル人材育成プロジェクト」とは
令和6年能登半島地震を受け、職を失ったり働き方が変化した地域住民、特に珠洲市・能登町を中心とした能登地域や避難先にいる女性や何らかの事情で就労が困難な方々が、地元で暮らし続けながら働ける環境づくりが求められています。
その声に応えるために始まったのが「能登半島デジタル人材育成プロジェクト」です。パソコンの基礎やデータ入力などのデジタル業務の学びと、講座後に都市部や地域企業のオンライン業務を受注できるしくみが準備されています。単なるスキル習得ではなく、デジタル業務を「地域の新しい生業」として育て、持続的な地域経済につなげることを目指す取り組みです。本事業は休眠預金活用事業として、JANPIAの枠組みのもとVALT JAPAN株式会社・株式会社Asian Bridge・合同会社CとHが運営しています。

なぜ受講しようと思ったのか
私は、石川県に移住し被災しました。震災で事業継承予定だったブドウ園の家が全壊し、農家の資金面の関係から継ぐことができなくなりました。私の住む賃貸住宅も契約の期間が迫り、新たに空き家を探し回る日々。幸い隣市で住まいを見つけましたが、なかなか希望に合う職場には出会えませんでした。

「夢を諦めてただ働くのは違う。」そう思い、正社員は一旦諦めてフルタイムパートでダブルワークを続けていた頃、知人からこの講座を紹介されました。
パソコン一つで場所にとらわれない働き方に以前から興味があり、「自分の力で稼ぎたい」という思いもありました。デジタルスキルを身につけながら案件獲得をめざせる内容に惹かれ、受講を決めました。
セミナーの様子
講座は基礎・応用・実践の3回構成で、内容は非常に充実していながら受講料は無料。能登・金沢・オンラインの3拠点で参加でき、縦に長い石川県でも通いやすい設計。特にオフライン会場には講師とは別に2名ほどのサポートスタッフが常駐し、わからないことはすぐ質問できる環境が整っていてとても助かりました。
各会場にはお茶やお菓子が用意されており、リラックスした雰囲気の中、会場ごとのグループで講座の不明点を自然と教え合える場面が見られました。
講座はパソコンの構成やWindowsの基本操作など、パソコン操作に慣れていない人でも理解できる内容から始まります。パソコンを使い慣れているつもりでも、知らなかった操作があり、「分かっていたつもり」だった部分を一つひとつ丁寧に理解できた点は大きな収穫でした。

受講して感じたこと・学び
受講を通じて得た最も大きなものは自己効力感の向上です。基礎からデジタルスキルを学び、ワークで実際に操作も行うため、学ぶだけで終わらず自身のスキルを確認することができて良かったです。
講座前の自分と比べてデジタルスキルが向上し、職場ですぐにスキルを活かすことができ、一歩ずつ着実に前に進んでいるという希望が持てました。一番驚いたのはサポート体制の丁寧さです。受講後案件応募をする前に、事前に希望者に面談を設けるなど、大変充実したサポート内容から運営スタッフの本気度を感じました。Googleスプレッドシートの操作やオンラインコミュニケーションなど、講座で学んだ内容がそのまま役に立つ場面も多く、
「学びが実務につながった瞬間」を体感できたのは、私にとって大きな喜びでした。

今後どう生かしたいか
2ヶ月間にわたる充実した講座で得たスキルは、現在就労中の事務業務にも活きています。講座に参加したことで、noteのライティング記事作成を任されるようになりました。一歩一歩着実に成長している実感を得ることで気持ちも前向きになります。
今後は、都市部・地域内企業からのデジタル業務を受注し、オンラインで柔軟に働ける環境を2年以内に確立することが目標です。
地域に住んでいて感じるのは伝え手の不足です。地域独特の古くから受け継がれてきた歴史や文化を内包してしまうのはもったいないと感じています。デジタルの力で情報発信をサポートし、地域の思いや魅力を伝える人材として貢献していきたいと考えています。

まとめ
「能登半島デジタル人材育成プロジェクト」は、震災の困難を乗り越え、私たちに新しい「生業」と「希望」を与えてくれました。この充実した講座を通じて、デジタル業務受注で実践を通じてキャリアアップをしていこうと思います。
新しい働き方を探している方にとって、このプロジェクトは必ずや新たなきっかけになるはずです。場所にとらわれない働き方は、人生の選択肢を増やし、自分らしい未来を描く力を与えてくれます。私自身も場所にとらわれない働き方で、人生の幅が広がる前向きな希望を持つことができました。
私自身がそうであったように、ぜひ皆さんにもこのような事業を通して、新たな人生の一歩を踏み出してほしいと思います。

本事業は、10年以上取引のない預金等を活用する休眠預金活用事業として実施されます。本制度では、政府が指定する「指定活用団体」である一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が資金を管理し、その下で複数の資金分配団体が事業を推進します。今回の事業では、資金分配団体である一般社団法人RCFの「能登の復興まちづくりおよび生業復興支援事業」の枠組みのもと、 VALT JAPAN株式会社が実行団体として採択され、事業を推進しています。