SMILE PEOPLE

Aplicocco

ジャムアーティストが生み出す色とりどりの世界

北陸を拠点に全国に笑顔を届けている生産者や職人の方の想いやこだわりに迫る「SMILE PEOPLE」。

富山県射水市で、全国から注文殺到、即完売が続くジャムがあるという話を聞き、取材に伺いました。

お話を聞いたのは「ジャムアーティスト」として活動をされているAplicocco堀井さん。伺った製造工房はまるで実験室、ジャムについて語るその眼差しはまさに研究者。独創的なジャムを生み出す、その原動力やこだわりに迫りました。

ジャム作りは「奥深き化学」

いつ頃からジャム作りに興味を持って作り始めたんですか?

子供の頃から手作りの物とかがすごく好きで母といちご狩りに行っていちごジャムを作ってみたり、お菓子を作ったり、ご飯を作ったりというのがすごく好きでした。私自身、市販のジャムが美味しいと思えなかったんです。例えば給食で出るジャムやマーガリンは食べられなくて。自分が美味しいと思うジャムを自分の家族や自分の大事な人のために作りたい、それがきっかけでした。

いつ頃から工房を構えて本格的に作り始めたんですか?

工房を構えたのは7年前ですね。それまでは喫茶店でお菓子作らせてもらったりしていました。
工房を作ったきっかけは、富山の条例ではジャムに関してはどのような施設で作っても大丈夫だったんですけど、私が作りたかった「ミルクジャム」というのが乳製品に該当し、乳製品製造業の資格を取らないといけないことになり、その流れでこの建物を建てました。
ミルクジャムには一つエピソードがありまして、娘が小学校高学年の頃、学級崩壊してしまってクラスが荒れてしまって学校に行くのがしんどくなってしまったんですね。そのときに娘が「お母さんのミルクジャムがあるなら私朝ごはん作るよ」っていってくれたんです。「学校にいくのが嫌、休んでいい?」と言っていた娘がそう言ってくれて、美味しいものが生きる力になるんだなって思いました。そして、そのミルクジャムを世の中に出したいと思ってジャムを作る為の工房を作りました。

ジャムのどんなところに魅力を感じたのでしょうか?

材料がシンプルな分、作り方を変えることによって違うものができるんです。もっと美味しい作り方ができるのでは、と研究・探求したりして実を結んだ瞬間に特に面白さを感じます。勉強すればするほど、ジャムって砂糖と果実だけなんですけど、すごく奥が深くて「化学」なんですよね。ゲル化に関しても、注ぎ方とか、どのPHでどの糖度でゲル化するか、それが果たしてジャムとして美味しいのか、とかそういったことがすごく面白くて。水にもこだわっています。水道水の硬度を調べて、硬度に影響を受けないように軟水機を入れて水質に左右されないように工夫したりしています。

素材へのこだわり

素材にも大変こだわっていると伺いました。素材選びのポイントはどのようなところでしょうか?

栽培方法とか、農家さんがどんな気持ちで作っているかは勿論大事にしています。でも素材を選ぶ際に一番大事にしているのは香りです。ジャムに適した良い状態のもの、美味しい状態のものがあるんです。そういったものは大体香りでわかるので、私は香りで選んでいます。現在は年間120種類くらいのジャムを作っています。匂いをかいで、組み合わせを考えたり。苺で10パターンとか、1つの果物を突き詰めることもあれば、新しい味を試すこともあります。

容器の瓶にもこだわりがあるんですよね?

最初はサイズとして収まりが良い、引き出しに入れやすく管理しやすいというところから使い始めたんです。ですが、あるとき東京の百貨店に丸い瓶でジャムを送る必要があり、瓶を変えたことがあったんですが、丸いほうが甘く感じてしまったんです。「どうして同じもので瓶を変えるだけで味がかわるのか?」と当時は思いました。でも私達は丸いと甘く感じることがあるみたいなんです。例えばカクカクしている羊羹ってありますよね?あれは甘さを感じにくくしてバランスをとっているそうなんです。私のジャムも同じで、甘いものをすっきり、より美味しくたべるためにこの形になっています。

ジャムが誰かの生きる力に

どのような想いでジャムを作られていますか?

「疲れている人が食べて元気になったらいいな」ということも最初の頃は思っていたんですが、現在はもうその部分はすっ飛んで自分の求めるものを突き詰めています。私が突き詰めれば突き詰めるほど「このジャムが癒やしになっています」とか、そういったメッセージをもらえるんです。最初の想いとしてあった「みんなの生きる力になればいいな」というのが、根付いてきた感じがしています。

これまで印象的だった出来事は?

作ったジャムで賞を頂いたのですが、それを農家さんに伝えたらすごく喜んでもらえました。すごく嬉しかったです。

飽くなき探究心、この先もジャムに真っ直ぐ

現在研究中のテーマはありますか?

常に新しい素材や新しい味は試しています。特にペアリングについて、最近は研究しています。フードペアリングといってどの食材がどの食材に合うか、合わないかといったことの研究ですね。例えばラベンダーと桜餅の香りが近かったりとか、同じ香気成分を組み合わせると相性が良かったりします。どうせ苺を楽しむなら苺とレーズンなのか、苺とパイナップルなのか、その果物の可能性を色々楽しみたいです。

ペアリングのアイデアはどう組み立てているのでしょう?

ケーキとかアイスとかを食べたときにひらめいたり、石鹸の匂いから バニラ・ベルガモット・すみれを感じたり。普段の生活でも無意識のレベルで考えているかもしれません。

現在の活動を続けていく上で、難しさはどういったところでしょうか?

大量生産ができないことですかね。求められる分を作れない。以前は時間の許す限りやっていたのですが、やりすぎて体を壊してしまいました。手首、肩、首・・。好きなことなら体は壊れないと思っていたんですけど壊れちゃうんですね。没頭すると12-14時間とかずっとやってしまいます、もう瞑想しているのに近いですね。

今後新たに取り組んでいきたいことはありますか?

ジャム作りが面白いのでこのまま追求していきたいです。目から鱗が落ちるような作り方がまだあるんじゃないかと思っています。とにかく、飽きないんです。


取材後、堀井さんのジャムへの想いに感銘を受け、Aplicoccoのジャムを購入し、初めて食べました。視覚に入ってくる色鮮やかな果実、口に入れた瞬間広がる果実の香り、そして甘すぎない絶妙な甘さが目→口→鼻→脳内へと順に駆け巡り、気がついたら一瓶ぺろりと「瓶食いで完食」していました。(堀井さんも「瓶食い」をオススメされておりました)
次はどのような組み合わせのジャムが世に送り出されるのか、今後の展開も追いかけていきたいと思います。



Aplicocco (アプリコッコ)

富山県射水市にあるジャム工房。マーマレードの世界大会である「ダルメインマーマレードアワード世界大会」において、2019年に金賞3つ及びベストカテゴリー賞(最高賞)を受賞、2021年には銀賞4つ、金賞2つ及びベストカテゴリー賞受賞。さらに、2022年に金賞3つ、銀賞5つ受賞。



(取材/株式会社Asian Bridge、撮影/トナミユキコ)

メルマガ
登録