SMILE PEOPLE
輪島網元 刀祢沖〆
地域への想いと独自技術が生み出すPremium Fish
北陸を拠点に全国に笑顔を届けている生産者や職人の方の想いやこだわりに迫る「SMILE PEOPLE」。
石川県輪島市で、独自の加工技術を持つ水産加工拠点があると聞き、取材に伺いました。
海にほど近い加工拠点に並ぶ魚は眩しいほどの鮮度、また加工場の中では独自技術で開発された機械が存在感を放っていました。元は建設業からスタートされて、現在は水産加工、レストラン運営と幅広く事業を展開されている輪島網元 刀祢沖〆の刀祢社長に話を伺いました。
外海の特徴、産地加工の背景
外海の特徴について教えてください。定置網にどういった魚が多く入ってくるのでしょうか?
一番多いのは青物でブリですね。ブリのフクラギ(ブリの幼魚)とか。その次はサワラ(カジキマグロ)ですね。5月から6月はタイが獲れます。アジ、サバもよくとれます。あと、6月はトビウオが来て、そのあとはマグロですね。
基本的には獲れた魚は加工されることが多いのですか?
2-3割は産地加工して送る計画にしています。実はここの外海は10月いっぱいで網を上げてしまうんです。その後、3月までの5ヶ月間は操業できないんです。そこで、乗組員が自ら加工して売る体制を作って年間を通して自分たちで雇用を維持しています。自分たちの魚は7ヶ月間、あとは同業者から仕入れて販売する、というのが外海の宿命なんです。このあたりの海は冬場は荒れてできないので、どうしても加工でやっていかないといけないというのが基本的な考えです。
建設業からスタートしてその後水産加工をやるようになったのにはどういった経緯があるのでしょうか?
水産加工は35年の歴史です。地元で定置網をやるという話しがあり、そこからスタートしました。そのときは出資者として関わりましたが、2年経ったタイミングで代表を引き受けました。私は漁師ではないのですが、色々勉強して漁に面白みを感じてきたんです。そして今も魅力を感じ続けています。
先程も話しましたが、冬場の外海は荒れるので失業する人が多かったんです。それではこの浜を守っていけない、そして地元に若い人、携わったひとが生計を建てていくという環境を作らないとダメだということで加工を始めました。
消費者と直接繋がる関係性づくり
商品を作る際に込められている想いとはどのようなものでしょうか?
漁師とすれば、魚ってこんなに美味しいということを実感してもらうのが一番です。私どもは小さな網ですし、それを持続的に続けていく為には消費者と直接繋がるいう体制をつくらないといけない。生産者から消費者へダイレクトに販売するので流通コストが下げられます。消費者としてはいいものが安く食べられる。魚は生臭くなくて、何回食べても飽きないという点を感じてもらいたい。生産者としては自分たちで販売価格を決めてお届けする。消費者も高くないと感じれば双方メリットがあると思います。魚の値動きがあるなかで、水揚げだけに頼っていると不安定になるので加工で売上を確保・安定化させていきたいです。
商品開発において他社との違いはどのようなところでしょうか?
新しい機械の導入で劇的に冷凍技術が向上したというのが一番の強みですね。例えばイワシは一般的には獲れたての数時間しか食べられません。それが私達の技術で刺し身で提供できるというのは新しいと思います。そしてサバも新しいうちに加工することによって、〆鯖にしなくても生鯖としてお届けできる。臭みもありません。
干物もやってきたんですが、価格競争にならない鮮魚を売る、冷凍で鮮魚を売るというのは他にないモデルだと思っています。全国に全くないわけではありませんが、自分達で獲って7時間以内に仕上げるというのはどこにもないかもしれません。
今回新商品としてイワシとメジマグロの刺し身を販売するそうですね。
はい。まずイワシの刺し身について、生食で食べられるということが珍しいですね。鮮度管理して、直接漁師から提供してもらった店しか出せないということが多いのですが、私達の商品であれば家庭の冷凍庫から出して食べられます。イワシはどの魚にも食べられる程の美味しい魚なので、その美味しさが実感できると思います。
マグロは一般的にも美味しいものが多いですが、家庭の冷凍庫から刺し身を取り出せるというのは、料理の幅が広がると思うんです。匂いもなく、すぐに食べられます。
地域の未来に向けた取り組みを続けたい
若いメンバーが多く働いているそうですね。
うちの乗組員は多い時で12名いますが、一つの網で見ると一番若いのがうちですね。今年も新卒の高校生が入りました。6名が30歳以下というのは一番の自慢です。
レストラン「TONE」も運営されていますが、どういった想いで作ったのでしょうか?
まず、店で提供しているのは全部自前の冷凍の刺し身です。食の安全安心ということを実感してもらう場で、美味しさも勿論実感してもらう。それが口コミ等で販路につながればいいなという思いもあります。もう一つの大きな目的としては女性が活躍できる職場を作っていきたいという思いで作りました。定置網も建設業も男性中心なので、それだと全体のバランスがとれない。レストランの運営を通して女性が活躍できる環境を作りたいと考えました。
海の環境の変化で何か感じているところはありますでしょうか?
長年思っているんですが、私はここで生まれ育ったので川が元々ここへ流れていたのを知っているんです。そのときは生物多様性があり、エビ、マダイ、その他あらゆる魚種の宝庫でした。サケもマスもいたのですがどんどん消えていきました。放水路をまっすぐにして護岸したあたりからでしょうか。私が子供の頃はこんなにゴミは溜まっていなかったです。海の環境というのは山の水が影響します。山からの栄養で植物プランクトンが流れてこないと海の生き物もダメなんですね。全てが関わっています。まだまだ時間はかかるかもしれませんが海の環境改善に向けて働きかけはずっとしていきたいと思っています。SDGsって言葉が最近使われていますが、本当に大事だと思います。とにかく漁師がいなくならないようにしないとね。
取材後、レストランTONEにてイワシ、メジマグロの刺身を実食させて頂きました。「これが本当に冷凍の刺身なのか」と確かめてしまうほどに鮮度抜群の食感、魚の旨味と甘味が口いっぱいに広がる幸せなひとときでした。今後も独自技術を使って全国に美味しい魚を届ける活動に注目していきたいと思います。
輪島網元 刀祢沖〆
石川県輪島市から全国へ商品を販売。漁港直仕入、即加工、徹底した温度管理と独自製法で獲れたての鮮度、旨味を保持。能登の天然魚の美味しさを究極まで高めるための研究を行い、魚が本来持っている旨味を生かし、臭み成分を徹底的に取り除き、タンパク質分解酵素の働きを止め、魚の劣化を防ぐ独自技術を持っている。
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(取材/株式会社Asian Bridge、撮影/トナミユキコ)