SMILE PEOPLE

叉焼春(チャーシューメイ)

食の総合プロデュースを通じて、金沢から世界へ

北陸を拠点に全国に笑顔を届けている生産者や職人の方の想いやこだわりに迫る「SMILE PEOPLE」。

今回お話を伺ったのは、石川県金沢市を中心に食の総合プロデュース業を行っている、アイエムエムフードサービス株式会社会長・創業者の河村征治さんと、代表取締役社長の水口直文さんです。「LEMONADE by Lemonica」など多数の人気飲食店を経営されています。

2022年10月20日に埼玉県深谷市に開業した「ふかや花園プレミアム・アウトレット」にてチャーシュー専門店「叉焼春(チャーシューメイ)」をオープン。もともと同社が運営する点心専門店「​​YAUMAY(ヤウメイ)」で定評のある叉焼(チャーシュー)をより多くの方に知っていただきたいと、専門店としてオープンしました。

「本格叉焼専門工場(チャーシューメイ アトリエ)」内にはレストランが併設されており、出来たての叉焼を食べることができます。また「本格叉焼直売所(チャーシューメイ ストア)」では、テイクアウト商品を購入することが可能です。

今回は河村さん、水口さんに本場中国のレシピを活かした叉焼の魅力や、金沢から世界を見据える飲食展開への想いについて語っていただきました。

本格チャーシューが味わえる、工場併設型の叉焼専門店

店内には高さ約120センチにもなる大きな円筒型チャーシュー窯が5台並んでおり、叉焼が作られていく様子を見学しながら、飲食することができます。ガラス張りになったアトリエ内の様子はライブ感があり、熱々の温度と共に食欲をそそる匂いが店内に漂っていました。今回は水口さんの案内のもと、店内を見学させていただきました。

叉焼はどのように作られているんですか?

日本の焼豚(チャーシュー)といえば、醤油味のタレに漬け込んで煮るスタイルが一般的ですよね。しかし、本場中国では、煮ずに二股の特別な金具で吊るし焼き上げる「串焼き」スタイルで作られています。そのため、当店では「叉(また)に焼く」と書いて「叉焼(チャーシュー)」と呼んでいます。

作り方としては、まず厳選した豚肉を、花の香りが感じられる中国酒「玖瑰露酒(メイクイルチュウ)」や、東洋のチーズともいわれている中国の伝統発酵調味料「南乳(なんにゅう)」を配合した秘伝のタレに2日間じっくり漬け込みます。秘伝ダレに漬け込むことで旨味やコクが引き出され、奥行きのある風味を作り出すことができるんです。じっくりタレに漬け込んだ後はS字フックで吊り上げ、250度の専用窯で丁寧に燻していきます。タレを何度も繰り返し塗ってじっくりと焼き上げ、その後余計な油を落とすために肉を寝かせて完成です。

当店では、ロンドンで初めて中華部門でミシュランの星を取ったスーンシェフによる中国伝統のレシピを守り、一つひとつ丁寧に作っています。

叉焼のこだわりを教えてください。

当店では厳選した国産豚肉を使用していて、規格やサイズ、脂身と赤身のバランスなど細かく規定を定めています。現在は、主に三枚肉を使用したトロ叉焼と、肩ロース肉を使用した赤身叉焼を提供しています。トロ叉焼は、その名の通りトロトロとうっとりするような柔らかさが特徴です。赤身叉焼は、脂肪が少ないのにしっとりしていて、赤身ならではのソフトな弾力とさっぱりとした味わいを楽しむことができます。味も3種類展開していて、秘伝のタレを使った「旨甘たれ味」、粗挽き唐辛子など中国伝統のスパイスををまぶした「激辛タレ味」、黒胡椒の香ばしい風味が口いっぱいに広がる「刻み黒胡椒味」があります。

今後は豚肉だけではなく、日本が誇る黒毛和牛を使った和牛の叉焼や、鴨肉や鶏肉の叉焼も展開していきたいです。

家でも美味しく叉焼を食べるにはどのような調理方法がオススメですか?

解凍後、シンプルにスライスして召し上がってもらってもおいしいですが、オーブントースターで表面を炙っていただくと、より一層おいしく召し上がってもらえると思います。すこし厚切りにカットしてもらえると、より肉本来の旨味を楽しむことができるのでオススメですよ。

世界各国を渡り歩き、研鑽した料理の道

創業者の河村さんは、海外進出準備のため現在ロンドンにいらっしゃるということで、今回はオンラインにて叉焼春(チャーシューメイ)出店や、地元金沢についての想いをお伺いしました。

河村さんは、どういった経緯で料理の道に入られたのですか?

高校生の頃「将来フランス料理店を開きたい」と思い、卒業後すぐにフランスのパリで修行を始めました。帰国後は日本のフランス料理店で働きはじめましたが、もっとフランス料理を追求したくなり、もう1度フランスのストラスブールに渡り、修行を重ねました。日本に帰ってからは、コンビニエンスストアや商社などの商品開発にも携わりましたね。その後イタリアンやエスニック料理店など多種多様な外食業態を手掛ける大手上場企業に転職し、20代で副社長に就任しました。アメリカや中国への出店にも積極的に関わるようになり、複数店舗を任され、現地で指揮を執る。そんな20代でしたね。その後、退職して独立した形です。

20代で上場企業の副社長をされていたということですが、なぜ独立されたのですか?

もともと独立したいという気持ちが強かったんです。2011年の東日本大震災が起きたタイミングでいろいろ考えるきっかけがあり、31歳の時に地元金沢で起業しました。現在12年目に入りましたが、あくまで会社の中枢は金沢にあって、金沢を中心に日本全国にお店を展開しています。

世界トップシェフと手を組み実現させた、本格中華専門店

もともと今回の叉焼を提供していたという、点心専門店「​​YAUMAY(ヤウメイ)」について教えてください。

ヨーロッパを巡っていた18〜19歳の時に、ロンドンで一際賑わっている目立つお店を見つけました。聞くところによると、ALAN YAU(アラン・ヤウ)という香港系のイギリス人が1人でロンドンの中心地でいろんなお店を展開していて、しかもどこもかしこも繁盛させていたんです。「僕もアラン氏のようになりたい」と、目標に掲げていた存在でした。そこから約20年近く経ち、自身も経営者としてお店を出店しているなかで、東京駅前のビルへ出店誘致のお話をいただきました。これはすごくいいきっかけだと思って、アラン氏に何度も手紙を書いたんです。「あなたのことを知っていて、いつか一緒に仕事がしたいと思っていました。ぜひ、日本進出を一緒にやっていきたいです」とラブコールをして。そこで4年前に立ち上がったのが、「YAUMAY」というお店です。僕にとっては、とても思い入れのある店舗になりました。

(提供:アイエムエムフードサービス株式会社)

YAUMAYが世界各国からお客様が集まる人気店となり、その中の一品として非常に人気があったのが叉焼でした。

地方に足を運ぶきっかけを作り出す

アウトレットにオープンしたきっかけは何ですか?

実は今回オープンするにあたり、何度もアウトレット側と話し合いをしてきました。通常の商業施設の場合、売り場面積をなるべく増やしてお客様に店内を見てもらうことが大切ですよね。でもそれだけじゃ面白くないんじゃないか、って。コロナ後の日本の商業施設を考えたとき、わざわざ地方に行く価値のあるもの、たとえば新たな体験ができたりとか、今まで見れなかったものが見れたりとか、そういった他にはないものが必要になってくると思いました。

そこで考えたのが、叉焼の専門工場を作るということです。叉焼の専門工場なんてほとんど見たことがないと思うんです。職人の手仕上げを忠実に再現している様子を目の前で見ていただき、出来たての叉焼を食べてもらう。または、そのまま家に持って帰ってもらう。商業施設の中に巨大な工場を作り、工場・直売所一体型のお店を構えるということは、おそらく日本初の取り組みだと思います。そんな新しい取り組みを一緒にやりませんかとお話しし、出来上がったのが今回の店舗です。すでにたくさんのお客さんに来ていただいていますが、見学だけに来る方もいらっしゃるみたいですね。「ああ、叉焼ってこうやって作っているんだな」と、楽しんでもらえたらうれしいです。

金沢から世界へ伝える日本の食文化の魅力

海外進出について、今後検討されていることはありますか?

もともとフランスで修行をしていたこともあり、海外の方と一緒に仕事をする機会は多くありました。いま注力しているのは、日本のブランドを海外で紹介していくことです。外国人が日本に旅行に行く1番の目的は「食」なんですね。豊富な食材や多彩な調理法など、日本の食文化は世界からみても非常に魅力的です。日本に行かなくても、海外で日本食の魅力に触れられる状況を作っていくことは、とても価値があると思っています。年内には、ロンドンの中心に寿司店をオープンする予定になっていて、2023年春頃には「LEMONADE by Lemonica」常設店をロンドンで展開していく予定です。強みのある日本ブランドを、もっと海外に展開できるよう、コーディネートしていきたいと思っています。

地元金沢への思いについて教えてください。

僕自身、高校生まで金沢で生まれ育って、いま現在も会社の本社機能は金沢に置いています。ありがたいことに日本全国や世界各国で仕事をさせてもらっていますが、すべての情報や意思決定は地元金沢のメンバーでやっています。いまはリモートワークやオンライン会議のおかげで、場所を問わずリアルタイムで相互共有できる時代になってきていますよね。

今後日本でも地方に住みたい人が増えてくると思います。そうなったとき、金沢という土地は、いろんな人が移住して楽しむことができる場所ではないでしょうか。僕はこれからも地元金沢を中心に、どんどん新たな飲食事業を展開していきたいと思っています。

カリスマシェフが手掛ける中国伝統の叉焼を味わうことができる「叉焼春(チャーシューメイ)」。これまでにない新しい形で展開されたことで、地方へ訪れるきっかけを生み出しています。

取材のなかで「ロンドンではすでに活気が戻ってきていて、たくさん新しいことが生まれている。日本人もどんどん海外に出ていくことで、もっと日本が国際的に尊敬される存在になっていってほしい」と話される河村さんの姿が印象的でした。

金沢から世界へと日本の食文化を発信し続けていく姿から、今後ますます目が離せません。

叉焼春(チャーシューメイ)

ALAN YAU(アラン・ヤウ)氏とタッグを組んだ点心専門店 「YAUMAY(ヤウメイ)」の定評あるチャーシューをより多くの方に知っていただきたいと、ふかや花園プレミアム・アウトレット(埼玉県深谷市)内にオープンした叉焼専門店。 NOTOteMAでは、「窯焼き叉焼 トロ叉焼セット」「窯焼き叉焼 赤身叉焼セット」などを販売中。

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(取材/株式会社Asian Bridge、撮影/トナミユキコ)

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