SMILE PEOPLE

旬菓処・菓 KONOMI

築150年の蔵と果樹園が生み出す、癒しのお菓子

北陸を拠点に全国に笑顔を届けている生産者や職人の方の想いやこだわりに迫る「SMILE PEOPLE」。

今回お話を伺ったのは、富山県富山市でご自宅の蔵を改装し、デザートカフェ店「旬菓処・菓KONOMI」を営んでいる村西千明さんです。村西さんは、県内の有名ホテルやパティスリーでの経験を経て、お店をオープンし、2023年2月で丸4年を迎えました。

「旬菓処・菓KONOMI」の店内は、昔ながらの蔵の外観からは想像がつかないほど、オシャレな内装となっています。一枚板から作られたテーブル、薪ストーブの炎、明かりを落とした照明、少し低い天井など、蔵が作り出す落ち着く空間が特徴のお店です。

村西さんの手によって出来上がるケーキや焼き菓子は、どれをとっても芸術品のように美しく、お店も地方雑誌などでも多く取り上げられていて大人気です。夏にはかき氷専門店として連日行列ができ、昨年のクリスマスケーキも準備数に限りがあったこともあり、即日完売。

そんな「旬菓処・菓KONOMI」の象徴である築150年の蔵と果樹園、地域のつながりについてお話を伺いました。

築150年の蔵の存在

お店をオープンするにあたり、なぜ蔵を改装した店舗にされたのですか?

この蔵は、先代の祖父母たちが永年大事にしていた蔵で、私も子どものころからずっと見てきました。

物置というよりは、ハレの日の食器など、大事なものを保管して、漆器なども一つ一つ布で包んできれいに保管していました。最近、ご近所など古くなった蔵の多くは取り壊されているのを目にしていましたが、この蔵を取り壊すのはもったいない。残して何かに活用したい。という気持ちがずっとあったんです。

蔵は古いので壊すか、修繕が必要。改装となると難しそう。とずいぶん悩んだのですが、いい材木屋さんに出会い、蔵の良さを活かしたお店にリノベーションしていただきました。
おかげで、外観は、蔵そのものですが、店内は蔵とは思えないほどオシャレに改装され、居心地のいいお店に生まれ変わりました。

お店をオープンされるまでの経緯を教えてください。

元々、県内のホテルでパティスリーの経験を経て独立。その後、実家に農地があったので、果物の樹を植えて実ったブルーベリーなどをケーキや焼き菓子に加工し、喫茶店やコーヒー店、カフェなどへ提供をしていました。しばらくして、“ご近所の方にも利用してもらえるお店を作りたい“と開業を決意しました。

もちろん、蔵をリノベーションして開業することに不安はあったのですが、同業者や周りの方からは、「やっと自分の店をオープンするんですね」と待ち望んでいた反応があり、後押しされた感じですね。

お店を開いたからこそ感じる、お客様とのつながり

蔵を改装されたお店は、外からもとても目を引きますが、反応はいかがでしたか?

初めは、蔵が「何のお店かわからない」という声が多かったです。でも、最近は、地域の方にもご来店いただくことが多くなりました。

通りから見ると昔ながらの蔵ですが、蔵の中に足を踏み入れると、異空間と感じるようなリフォームされた内装になっています。 それでも、柱など蔵が持っている独特な落ち着く雰囲気は残しています。天井は低いのですが、人はその低さが落ち着くので、それを利用し客席にしました。壁の色や照明、さらに薪ストーブの炎の効果で、より心癒される居心地の良い空間にしています。

蔵に保管されていた生活道具なども一部店内に置いてあります。収納に使われていた長方形の箱の長持(ながもち)もその一つです。先日来店されたおばあちゃんが、長持を初めて見たお孫さんに「おばあちゃんも昔、使っていたのよ。もう捨てちゃったけど。」など会話をしておられました。このお店に訪れたからこそ生まれた会話で、ケーキ屋に長持があるのも珍しいかもしれませんが、場に馴染んでいて、私は好きですね。

※長持=収納家具の一つで、衣類や寝具の収納に使用された長方形の木箱。

お菓子とは、「癒し・チカラ・楽しみ」

ご来店されたお客様にどのようなことを感じてほしいですか。

お客様は、私の作ったお菓子を食べて、お店の空間で癒されて帰って行かれます。ただ自分は特別な何かを提供したわけでもないが、「癒されて帰っていけるお店ですね」とお客様に声を掛けていただくことが多く嬉しいです。

これまでは、窓のない厨房で加工したものを提供するだけでしたが、店舗を持ってからお客様反応を直接肌で感じることができるようになりました。ただお菓子を提供するだけではお客様は癒されないのだと、お店をオープンしてから感じました。

最初は、お客様がフラッと気軽に訪れるお店にしたかったのですが、お菓子を食べたい方、ひと休みしたい方、お友達とお話をしたい方など。お客様それぞれがお店に訪れる理由が違います。ほんのひと時の休憩を提供できる場所と時間。そして、そのお供としてお菓子やケーキ、お茶があることで、お客様の心が和むような空間になったらいいなと思っております。

夏には行列ができるほど人気のかき氷ですが、始められたきっかけは何ですか。

周りは住宅街のため、毎年納涼祭の時期は、子どもたちで賑わいます。新型コロナウィルスの流行で納涼祭がなくなり寂しくなりました。そこで、地域の子どもたちに、以前のように楽しんでもらいたいという想いで、かき氷を始めました。納涼祭といえば、「かき氷」。お店の外で水風船を置くなど、小さい子たちも飽きないように工夫しています。
お客様には、コーヒー1杯、ケーキ1個でもいい。ケーキや焼き菓子を食べて癒されてお店を後にしてほしいですね。

また、定休日には講師を呼んで、地域の方向けのいろいろな教室を開催しています。終わった後は、KONOMIのスイーツを食べてもらい、ひと休憩をしてもらうなど、地域の方といろんな関わり方をしています。これからも気軽に訪れてもらえる場所にしたいです。

果樹園と地域の農家さんとのつながり

お菓子を作るうえで、こころがけていることはありますか?

“一つ一つ丁寧に“を心がけています。粉を振い方だけでも味が全然変わります。
あとは、なるべく富山県産のものを食べて欲しいので、卵、蜂蜜も富山県産のものもを使っています。

特に、蜂蜜は春と夏で花が全く違うので、香りも味が全然違うんです。蜂自体に抗生剤を与えず、丁寧に育てている蜂蜜農家さんの蜂蜜を使い、生菓子や焼き菓子に使用しています。県内の食材で作るのは楽しいですね。富山にもいい食材がたくさんあることを、できるだけ全国の方にもっと知ってもらいたいです。

また、お店のすぐそばに小さな果樹園があります。柿、梅、無花果、ブルーベリー、プルーンなどが季節ごとに実ります。実を摘んでお菓子などに使ったり、干柿や梅ジュースに加工して、お店でも提供しています。

頑張っている農家さんを応援したい。

知り合いの無花果農家さんも、高齢化でいつ辞めるかわからない。 “作り手だから“ではなく、近くにいらっしゃる農家さんともっと関わっていきたいです。誰でもリフレッシュに行く感覚で気軽に農家のお手伝いをする方が増えたらいいなと思います。

農家さんは、自分の知らない植物などのことをいろいろ教えてくれるので、とても勉強になりますよ。
農家さんとのつながりはおもしろいです。まるで、クイズでもしているような感覚です。

これからのお店について

今後やりたいことなどありますか。

近所の方や地域の子どもたちが気軽に立ち寄れる場所にしたかったのですが、新型コロナウィルスが流行り、考えていたイベント開催などができませんでした。

地域の子どもたちには、ちょっとお散歩気分で、果樹園に、気軽にブルーベリーや梅などの収穫体験などを開催したいですね。梅の木にもトゲがある。収穫時期は短い。など、そのとき得られる貴重な学びをぜひ体感してほしいです。遠くにお出かけもいいですが、体験した記憶はきっと残るので、ぜひいろんなことをやってもらいたいです。 コロナ禍でやりたくてもできなかった地域の方を呼んでのイベントを開催したいです。3年ほど前には開催していた果樹園のブルーベリーや梅の収穫など、そのときにしか体験できないことをやりたいですね。お出かけ気分で子どもたちが収穫体験に来てくれるようなイベントをしたいです。

オープンから4年。世の中は、ようやく通常の生活に戻りつつある傾向にあります。地域の子供たちで賑わう日が訪れるのが楽しみです。

旬菓処・菓 KONOMI

築150年の蔵を改装。旬のものをおいしく食べてほしいーーそんな想いから、小さい果樹園で育てた自家生産フルーツと富山県内の食材をメインにしたデザート専門店。 店主が素材にこだわり、丁寧に創作される芸術的なケーキやお菓子が人気。焼き菓子セットは、NOTOteMAでのみの販売。

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(取材/株式会社Asian Bridge、撮影/トナミユキコ)

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