SMILE PEOPLE

株式会社ティー・ツリー・コミュニケーションズ「里山の駅 つるぎの味蔵」

日常に埋まった地域の魅力を掘り起こし、生産者とお客さんを繋ぐ架け橋に。

北陸を拠点に全国に笑顔を届けている生産者や職人の方の想いやこだわりに迫る「SMILE PEOPLE」。

北アルプスの名峰・剱岳を間近に望む富山県上市町に、ユニークな地元特産品を扱うお店があると聞き、取材に伺いました。

お話を伺ったのは「株式会社ティー・ツリー・コミュニケーションズ」代表取締役の茶木勝 (ちゃき まさる)さん。
茶木さんは、東京から富山にUターン移住をされた方で、朝どれ野菜のほか、多彩な加工品を取りそろえる「里山の駅 つるぎの味蔵」のほか、地元の魅力を体感できる様々な事業を運営しているそうです。


今回茶木さんには、ささいなきっかけから始まった上市町との出逢いや、会社を始めることになった経緯、地域への想いについて語っていただきました。

日常に埋もれた地域の魅力を掘り起こす商品開発

まず、お店について教えてください。

 ここ「里山の駅 つるぎの味蔵」は元々、町の観光協会が運営する施設として農産物の加工や販売をしていました。店舗の奥には加工場があり、地元のお母さんたちが、夏には漬けものや粕漬け、冬には味噌造りをしています。

2014年の10月に町の歴史や文化に根ざした特産品を販売しようと会社を立ち上げ、2015年の春から指定管理者として運営に当たっています。店頭では地域の生産者さんのこだわりや想いが詰まった農作物を販売することに加えて、旬が過ぎてもそのこだわりを伝えられるように、加工品の販売にも力を入れています。

このお店は、訪れる方にとってどんな場所なのでしょうか?

ここは海側は滑川市、山側は立山町に挟まれた中山間地で、きれいな地下水に恵まれていることから、おいしい湧き水が豊富なことも特徴です。近くには有名な「穴の谷(あなんたん)の霊水」もあり、その帰りにお土産を買ってもらう場所にもなっています。大岩不動の通称で知られる「大岩山日石寺 (おおいわさん にっせきじ)」の帰りに寄ってくれる方も多いですね。

1年を通して「旬」を感じられるオリジナルジェラート

ジェラートがお店のウリだと聞きました。販売することになったきっかけは?

地元の農産品をもっと多くの人に知ってもらいたい想いから、長期間の保存できることで、季節を問わず、遠方にも発送できるジェラートの製造を8年前から始めました。地元上市町にある稲葉農園さんは、「紅ほっぺ」といういちごを”完熟”にして販売しています。完熟にするにあたって、どうしても出てしまう「食品ロス」の課題を、ジェラート作りによって解決できると思いました。さらに、安井ファームさんの健康肥料育ちの卵や、山間で採れるヨモギの新芽など、地域の特産品を活かしたメニューが増えていき、今では10種類ほどになっています。

ショウガを使った珍しいとジェラート、どんな経緯で生まれたのでしょうか?

上市町では、里芋と並ぶ特産品であるショウガを広めたいという想いから、10年ほど前に町の商工会女性部が、「上市でしょうが!」というシロップを作り、人気商品になりました。水やお湯で割るだけでなく、これからの夏の季節だと炭酸や焼酎で割ってもおいしいんです。これをもっと活用できないかと、試作を重ねて生まれたのが「ジェラートDEしょうが」です。その後、商品化の相談を受けたことで、ジェラート作りでお世話になっている氷見の会社に製造を依頼して、この春から販売をしています。



できれば旬のものを届けたい。しかし、季節によって本当においしく食べられる期間は限られています。でも、加工品にすることで、1年中おいしいものを味わってもらえると改めて感じました。

「どんなことでもやり切る」その姿勢が紡いだ人との出会い

様々な新商品を出されていますが、どのように開発されているのでしょうか?

これまでに20〜30品ほど生み出している商品開発は、地域の方々から声をかけてもらって始まることが多いです。最初は、町の歴史や文化を知ってもらう手段として「特産品作り」を始めました。「どんなに些細な物事でもやり切ること」をテーマにしているおかげか、次第に商品作りや販売のスタイルに共感をしてもらうことが多くなってような気がします。

生産者から商品開発を相談されたり、商品を販売してほしいと持ちかけられるようになりました。味蔵の店長をはじめ、スタッフの取り組む姿を見て、「相談したら何かできるのでは」と思ってもらえるようになったんだと思います。その結果、品揃えが充実していき、来店者も増える良い循環が生まれていきました。

地域おこし協力隊を民間企業で受け入れていることは珍しいそうですね?

はい、実は新しい取り組みとして地域おこし協力隊を受け入れています。今年も4月から1人、神奈川県の川崎市から味蔵のスタッフと共に新しい商品を開発する課題を渡して、日々活動してもらっています。

きっかけはコロナ禍で売り上げが伸び悩んだ時期に、新しい客層に出す商品を考えたいと思い、とある業界誌に載っていた「メンマ作り」をされている方に会うため、九州まで向かいました。その方に上市町まで来ていただいて、作り方を教えてもらいました。この話がちょうど去年の今頃 です(2021年春頃)。

そのようにして、思い切って挑戦した取り組みを地域で話してみたところ、同じように感じていた人たちから「地域のために立ち上がりたい」と賛同の声をいただき、組合を立ち上げ、1つの協議会を作り、地域おこし協力隊の受け皿としました。新しいチャレンジをしている人のもとには、新しい取り組みが集まってくるのです。

これからも大切にしたいコンセプトは…

茶木さん自身は、どのような経緯で商品づくりに関わるようになったのでしょうか?

富山に戻る前は東京で営業の仕事をしていました。当時は競争の激しい環境でしたね。10年ほど前に富山に戻ったとき、東京での生活に比べて時間がゆっくり流れていると感じた記憶があります。富山で生活を送っていく中で偶然、上市町の観光協会の人と山歩きをした際に一緒になったんです。そこで、「新たな特産物を考える協議会ができる。」という話を聞いて、参加することにしました。

はじめに私が関わったのはお茶作りです。名前が茶木だから (笑)
当時作ったのが、いまうちの主力商品になってる「メグスリノキの九宝茶 」の原型です。思い入れのある商品で、その後も改良を重ねていきました。

協議会では商品を作るところで止まっていて、どう販売するかまで考えていませんでした。「せっかく想いをもって作った商品、作りっぱなしで終わりにはしたくない。」そんな想いが強くなった結果、自分で販売することを決意し、起業するに至りました。

「生産者のこだわりを伝えたい」という言葉が何度も出てきました。茶木さんが大事にされている想いについて、改めて教えてください。

私は元々、農業に縁もゆかりもありませんでした。でも、この歳になり様々な事業を通して、多くの農家の方々と話す機会ができました。いちごひとつにしても、作り方や失敗談、工夫していることを聞くうちに、なんとかお手伝いがしたいという気持ちが強くなっていきました。その想いがジェラート作りにつながっていきました。産地直送の店だからこそ知れる部分を、お客さんに伝えながら販売したいと思っています。


生産者とお客さんが商品について話をしている場面に遭遇すると、すごくうれしい気持ちになります。「生産者の想いをお客さんに届ける」という店のコンセプトが現れた光景だと思います。

地域の方々と様々な事業を通して2人3脚で歩まれている茶木さん。そして、新しい挑戦を通じて繋がっていく地域内外の方達、想いの詰まった地域の特産物。茶木さんの取り組みを通じて、地域を元気にさせる活動の広がり、そして可能性を感じました。たくさんの人を巻き込みながら、愛すべき地域のために進まれていく様子をこれからも追っていきたいと思います。

株式会社ティー・ツリー・コミュニケーションズ「里山の駅 つるぎの味蔵」

富山県上市町にて、ユニークな地元特産品を扱っているお店。歴史や文化に根ざした特産品を販売している。 NOTOteMAで「「ジェラートDEしょうが」&農家さん手作り無添加ジェラートセット」「上市でしょうが!」「メグスリノキの九宝茶20個セット」を販売中。

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(取材/株式会社Asian Bridge、撮影/トナミユキコ)

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