SMILE PEOPLE
有限会社 えがわ
伝統を守り、福井の魅力を全国へ。
北陸を拠点に全国に笑顔を届けている生産者や職人の方の想いやこだわりに迫る「SMILE PEOPLE」。
今回ご紹介するのは福井県福井市で冬の風物詩「えがわの水羊かん」として古くから地元で愛されている老舗和菓子店「有限会社 えがわ」。いま話題となっている夏限定の人気商品があると聞き、取材に伺いました。
お話を伺ったのは、「有限会社 えがわ」取締役の江川 真紀子さん。江川さんは、福井県の魅力を全国に知ってもらいたい。と日々商品開発をされています。
福井県では、冬に食べる習慣がある「水羊かん」。
その「水羊かん」で有名なえがわが作る夏限定の「水かんてん」とはどのようなお菓子なのでしょうか?
今回江川さんには、地元・福井への想いとこだわり、「水羊かん」、夏季限定の「水かんてん」について語っていただきました。
福井で愛される冬の風物詩「水羊かん」
福井で「えがわの水羊かん」として有名なえがわのお店について教えてください
昭和12年創業で、いまは3代目です。もともと初代の社長は、和菓子屋として創業し、カステラやまんじゅうなども作っていました。それが徐々に「えがわは水羊かんの専門店」でいこうと変更していき、コマーシャルの影響もあり、正式名称ではないのですが「えがわの水羊かん」とお客様から呼ばれ、親しまれるようになりました。
水羊かんは、50年以上販売している人気商品です。
えがわの水羊かんについて教えてください。
水羊かんは11月から3月に製造販売する、冬限定商品です。
福井県では、冬になるとこたつに入って食べたくなるのが「水羊かん」。ひんやりと冷えた「水羊かん」は、なくてはならない冬のお菓子です。
シンプルな材料だからこそ、産地や素材にこだわっています。
昔から材料は変わらず、沖縄黒砂糖でコクを出し、ざらめ、こし餡、寒天、水のみで、添加物を一切使用していません。
口当たりがザラザラしない水羊かんを作るために、大きい鍋で一気に作り、冷ましながら流し込んでいます。水羊かんならではの、スーッと噛まなくても喉に入っていく口当たりと、「つるん」とした食感を出すために温度管理を大事に作っています。
そもそも、福井県では「水羊かん」は、どういった存在ですか。
福井県では、冬になると「水羊かん」を食べる習慣があります。
11月頃になって寒くなってきたな。と思ったら、「こたつ」「みかん」、そして「水羊かん」が冬の定番。スーパーにも、水羊かんが並びはじめると、「冬が来た」と実感します。
寒さの厳しい越前・福井では、暖かい部屋でひんやり冷えた水羊かんを食べることは当たり前の風習なので、県外の方に「なんで冬に食べるの?」「独特の食文化だ」と指摘されるまで、珍しいことだとは全く気づきませんでした。
えがわは「冬だけの味」を大事に守り続けます
夏にも水羊かんを求める方もいらっしゃいますが、冬にしか水羊かんを作らないこだわりは何ですか?
「夏にも水羊かんを食べたい。」とのご要望は多いですね。
なぜ、夏に販売しないの?など、よく言われます。
でも、こたつに、みかんに、水羊かん。という福井の冬だからこその習慣をこれからも守っていきたいですね。
寒い冬にこたつで食べるのと、暑い夏にクーラーのきいた部屋で食べるのとは、きっと違うはず。冬に食べた方がきっと美味しいです。
自然の手作りで作っているので、つるんとした味わいを出すのに、温度管理が難しく、口当たりがザラザラにならないように、冷ましながら一気に流し込まないといけないです。冬と夏で同じものを同じ環境ではどうしても作れないので、冬と同じように美味しい水羊かんを夏に作るのは、難しいです。夏に作って、お客様に「味が違う」と思われたくもないです。
他の菓子店では、夏にも水羊かんを販売しているお店もあります。えがわでも、夏にも買えると思い、水羊かんを求めてご来店される方もいらっしゃいますが、えがわは、水羊かんは冬の商品として大事に守っていきたいと思っています。
パッケージにもこだわりがあると伺いました
昔は、今と違い、漆塗りの木箱に入った水羊かんを切り売りにして、八百屋や駄菓子屋などでも販売していました。衛生上の問題で徐々に1つの箱になり、冷蔵庫が普及し、各家庭で召し上がってもらえるように、今の密閉した箱入りトレイに変えていきました。
実は、いまの赤い容器にするのに、周りからすごく反対されていたらしいです。
しかし、先代が「赤い容器がいい!」とこだわり、周りの反対意見もある中で、当時としては珍しい赤いデザインになりました。
他のお店の水羊かんは、茶色などの容器が多い中で、この赤いパッケージは、目立ちましたね。
いまでこそ、他にはない、赤いパッケージがトレードマークとなり購入していただくことも多く、ありがたいことに「えがわといえばこのパッケージ」が浸透されていきました。いまさらデザインを変えれないですね。
新商品の水かんてんも、昔ながらの水羊かんのデザインパッケージに合わせました。
福井県の材料にこだわり、いいものを全国に届けたい。
夏限定商品の「水かんてん」について教えてください。
冬だけでなく、他の季節にも商品があるよ。と、いろいろ提案したくて開発しました。
夏に「水羊かん」はなく、夏の商品を出したい、冬以外のえがわも知ってもらいたくて、「水羊かん」の代替品として、夏場にも召し上がっていただけるように「水かんてん」を2020年から販売し始めました。
水羊かんの製造技術を生かし、「ぷるん」とした食感を活かす商品として「水かんてん」にしました。
さらに、福井産の商品を使いたいけど、福井の特産品がすぐに思いつかなくて。でも、福井県の材料をもっとPRしたい。と思って、福井産の野菜などいろいろ試しました。
試行錯誤し、3シーズンくらいかかって最初に完成したのが、「水かんてん(黄金の梅)」です。
福井・南越前町の「新平太夫」というブランド梅なんですが、黄色く完熟してから収穫した梅で、甘い芳醇な香りが特徴です。
「水かんてん(黄金の梅)」は、「黄金の梅」といよかんを組み合わせたマーマレードで、無添加・無着色で仕上がっています。
今年から販売開始した「水かんてん(無花果)」も福井市本郷産のものです。
なぜ、本郷地区の無花果を使おうと思われたのですか。
まず、福井県で採れた無花果を探していて、水や空気がきれいで、きれいな場所に生息するコウノトリが舞う景色がきれいな地域の無花果ということで、一番美味しく、水かんてんとの相性も良かったので。
水かんてんのぷるんとした味わいが再現できて、食物繊維も豊富で整腸効果もあり、美容にもいいので、本郷の無花果を使うことにしました。
無花果の果肉を残すことにもこだわり、本当は作り立ての香りがいいのですが、少しでも無花果の香り、果肉から、素材そのものの良さを感じてもらいたいと思っています。
いざ「水かんてん(無花果)」を販売してみると、無花果のお菓子が意外に少ないらしく、無花果好きの方に大変喜ばれています。「懐かしい」と言ってご年配の方が多く購入し、そのご家族の方がさらに口コミやリピーターとして購入しに来てくださります。
こんなにも無花果好きの方が多いことに驚きました。
「水かんてん(無花果)」は、8月9月の夏季限定商品です。
昨年は、6月くらいにこの「水かんてん(無花果)」を販売をして、いざ無花果シーズンの9月には、商品が完売してなくなってしまいました。なので、今年は、販売時期を少しずらしました。
いまでは、スーパーなどでも販売していて、注文が増えてきています。
寒天に材料を流し込んで型に入れて冷ます。簡単で地道な製造過程ですが、毎日100個くらいは作っています。多いときは、200個くらい作ります。
水羊かんは、大きい鍋で一気に作れますが、それに比べて水かんてんは、ほとんど手作りに近い作業で、一日に何度も同じ工程を繰り返しながら作っています。
水かんてんのアピールポイントなど教えてください
最初は、「水かんてんって何?」と県外の方にも多く言われました。
まだ販売をして2年ほどの商品なので、初めての方は、いろんな種類を同時に購入していかれる方が多いですね。
水羊かんの「つるん」とした舌触りとは異なった、水かんてんの「ぷるん」とした食感を感じてもらいたいです。
夏場は、水かんてんを凍らせて、半解凍で召し上がってみてください。少しシャリっとした食感が新感覚で美味しいです。
小さく切って、炭酸と一緒に飲むのもおすすめです。
クリームチーズと一緒にバケットにトッピングなど、お好きな食べ方を見つけてください。常連様で、こんな食べ方したよ。とおっしゃってくださる方がいて、いつも勉強になります。
これからについて
今後のビジョンや、やりたいことはありますか?
何より、福井県の美味しいものを食べて、福井県の景色を想像してほしい。思い出してほしい。福井県民にも、再認識をしてほしいんですよ。福井県にも他県にも負けないくらい、いいものがあるんだよ!って。
だからこれからも、なるべく福井県産のいいものを使ってアピールしていきたいです。
8月末で販売終了の「水かんてん(越前塩)」も、福井の澄みきった海をイメージし、海から作った塩と、爽やかなレモン果肉が入った、夏ピッタリの商品です。
他にも、水羊かんを練りこんだ「水羊かんのジェラート」も今年から販売しています。
これからも、どんどんラインナップを増やしていきたいです。
お店に伺ったこの日も、水羊かんを求めてご来店された方がいらっしゃいました。「11月からの冬限定商品」と説明をされ、驚いた様子でしたが、今年から販売している「水羊かんジェラート」と夏季限定「水かんてん」数種類を購入してお店を後にされました。
たとえ、夏にも需要があったとしても、冬と同じ味、のど越し、水羊かんならではの「つるん」とした滑らかな口当たりの仕上がりにならないから夏には作らない。と、えがわの強いこだわりを感じました。
取材後、夏季限定の「水かんてん」の無花果と黄金の梅を購入し、いただきました。
無花果は、しっかりと果肉や粒が感じられ、無花果の香りもあり、無花果好きにはたまらない1品でした。
また、黄金の梅も鮮やかな黄色で、無添加・無着色とは思えないほど本当にきれいでした。梅といよかんのハーモニーが感じられ、口の中が芳醇な香りに満ちました。
どちらも、ぷるん。としており、見た目も爽やかな商品です。
写真映えは勿論ですが、他では味わえない、えがわの水かんてんをお楽しみください。
福井県産の商品をどんどんアピールしていきたいという江川さんの熱い気持ちが感じられ、これからどんな商品が登場するのか、今後の展開も楽しみです。
有限会社 えがわ
創業85年の地元・福井で愛されている老舗和菓子店。福井県の伝統を守り、魅力を全国に知ってもらいたいという熱い気持ちでお菓子を作っている。
NOTOteMAで、「水かんてん(無花果)」「水かんてん(黄金の梅)」を全国に販売中。
NOTOteMAへ(取材/株式会社Asian Bridge、撮影/トナミユキコ)